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short story
第13章 遥斗先輩とみなみちゃん 後編 / haruto
「花屋ですか・・・」


「春にな、見学に行かせて貰ったんだ。少し手伝いもさせてもらって・・・楽しかった、本当に楽しかった」


少女のようにウットリする顔はやはりキモいが兄さんは花が好きなのだろうか・・・


「俺の気がかりはみなみだ。小学校の高学年くらいからだろうか、みなみの周りに悪い虫が付き始めた。俺はその度駆除してきた。中学高校・・・害虫の数は増えて行った。ただ唯一俺の目が届かなかった虫が居た」


「・・・俺ですか?」


「そうだ、その虫はみなみをあっという間に食ってしまった・・・俺は許せなかった。本当に許せなかった・・・みなみはみなみだけを大切にしてくれる漢が現れた時、渡そうと思ってたからな」


兄さんがギリっと奥歯を噛み締め拳を握る。
本当に悔しかったのだろう。


「でも害虫は害虫なりにみなみを大事にしてくれてるようでな・・・みなみもお前を心底慕っている」


「大事です、本当に」


「みなみを守ってくれる男が居るなら俺は必要ない、それに・・・俺の人生も一度きりだ。この話を貰ったのもいいタイミングなのだろう・・・自分のために行こうと思う」


兄さんが俺を真っ直ぐ見る。


「山下、みなみを頼む」


「・・・はい」


「ああ見えて少々気が強いところもあるんだ」


「知ってます」


「ワガママは叱ってやってくれ」


「それは可愛いんで叱れません」


「後は・・・後はそうだな・・・」


兄さんは最後の一滴まで絞り出そうとしている。
みなみのことが本当に心配なのだろう・・・


「大丈夫ですよ、お兄さんからすれば漢には満たないかもしれませんけど俺もこの二年みなみを見て来たし・・・二人で積み重ねたものもありますから」


「積み重ねたもの・・・そうか」


最後兄さんは寂しそうに笑った。



「俺は既に必要なかったのかもな」


「そんな事もないでしょう?みなみお兄さんのこと大切に思ってますよ、俺にはそう見えました。お兄さんも分かってるんじゃないですか?」


「・・・どうだか」


フフッと笑った表情はやはりどこかみなみに似ていた。
顔自体は全く似てないのに不思議なものだ。


それからまた真琴さんにも一緒に来ないかと話すと宣言して、兄さんは帰って行った。
分かり切っている返事を可哀想に思いながらそれは口にできなかった。


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