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short story
第14章 遥斗先輩とみなみちゃん 後日談 / haruto
でも、やっぱりあの一年半は我慢して良かったと思う。
それなりに兄さんの信頼を得られたようだし・・・


その日、みなみは就職試験でその場には居なかった。
すんなり決まった俺と違いみなみは就職に苦戦していた。
落ちる度落ち込むみなみを可哀想に思いながら、ダメならダメで仕方ないとも俺は思う。


決まらないならみなみにはバイトしてもらって、これから俺が頑張ればやっていけなくはない計算だったから。
ただみなみの「雑貨を作りたい」夢が叶わないのはやっぱり可哀想だと思う。
だからできることなら受かって欲しいけど・・・




―――翌日、家に来たみなみが言った。


「お兄ちゃんも結婚するんだって」


「えっ!?」


そんなこと一言も言ってなかったけど!?


「しかもね、赤ちゃん生まれるんだって!」


「はあっ!?」


人には散々偉そうな事言っときながら自分はデキ婚!?


こんな話聞いてモヤモヤしない方がおかしい。
モヤモヤするけど理不尽だけど、相手がみなみの兄さんとなると我慢しなきゃいけないところが辛いものだ。


「・・・ねぇ、みなみの就職決まらなかったらどうする?」


「どうって・・・」


「結婚・・・延ばす?」


「延ばす理由にもなんないんじゃない?」


複雑そうなみなみにみなみなりの葛藤を知った。
けどそれが延ばす理由になるかといえば違うと思う。
みなみは何とも言えない顔で俺の胸に顔を埋めた。


商業の中で自分の好きなものを作るのは難しいと聞く。
それなら俺がシッカリすれば何も就職に囚われずみなみの好きなものを作らせてやれるんじゃないだろうか・・・
俺は俺に出来る事をするのみだけど、みなみが居なきゃこんな自分じゃなかったと思う。



―――そして春・・・
俺もみなみも無事卒業して、二人で婚姻届を出しに行った。
実感はまだないけど、受理された瞬間から俺たちは夫婦になった・・・


アパートを借りて住み始めて、俺は社会人としてのスタートを切った。
俺の左手の指輪を見ると誰もが驚いて・・・不思議なものでそれだけで他の同期より上司からの信頼が厚かった。




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