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short story
第15章 ゆらの恋 / yura
「騙すつもりはなかった、言えなかっただけ・・・ね」


「だって悪い人じゃないんですよ?」


そこで会話は止まり、短い静寂が訪れた。
放課後の静けさは一瞬を普段より長く感じさせる。


「確かに相手が居ても他の人を好きになることはあるかもしれない」


吉野先生の穏やかな声は放課後の静けさにあまりに自然で反発心を抱く間もなく私の中に入って来る。


「でもそれは両方に誠実じゃない。それにこんな関係続けてもいつか神崎さんは後悔すると思う」


「後悔なんてしません」


先生は首を横に振った。


「後悔する、第一誰かの不幸の上に成り立つ幸せはないよ。それに俺がその男の立場なら・・・本当に相手を好きだと思ってしまったら・・・そんな関係には巻き込めない。その子には幸せになって欲しいと思うと思う」


「彼は先生じゃないし・・・それに私の幸せは彼と居ることです。だから今のままでも満足なんです!」


目に見えるものが私には全てだ。
そんな回りくどい愛が本物だというのなら会ってる時だけ高志が愛してくれればいい。


「俺みたいなのは一般的な考えだと思うよ。相手は結婚してるんだろ?・・・それに高校生には高校生に似合う恋愛があると思うけど」


「・・・・・・・・・」


「不倫は止めた方がいいよ」


「でも彼は結婚してること私に話さないし・・・それに私が好きだってずっと言ってくれてるし、それに・・・」


私は焦って沢山の愛されてる証拠を探す。


それはすなわち、私と一緒に居たいということだって私は思ってた。
それなのに先生は、私があえて目を瞑って見ようとしなかった言葉を真正面から投げつけた。


「奥さんがいること、今だに彼は神崎さんに言わないの?」


「言いません・・・」


「それは神崎さん、大事にされてないよ・・・遊ばれてるよ」


「違う!だって優しいんです、大事にしてくれるんです!」


「それは本当の意味の大事じゃないだろ?分かってるよな?」


「・・・・・・・・・」


―――分からない、分かりたくない。
だって会えば高志は優しくて、ベッドでは沢山の愛を囁いてくれて・・・
我慢だって聞いてくれる。
沢山気持ち良くしてくれる。
私はそんな高志を信じたかった。








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