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short story
第15章 ゆらの恋 / yura
「・・・ごめん」


視線を合わせず高志は言った。
表面は申し訳なさそうに呟く中に関係を早く終わらせたい焦りを感じてしまった。


そこで初めてこの恋の全てを知った。
私の立場がどんなものなのかを・・・


「ゆらは可愛いし俺なんか勿体無いよ。もっと似合う奴が居るから」


「・・・・・・・・・」



私の好きになった人は嘘つきだった。
愛してるなんて言葉だけで気持ちなんてこもってなかったんだ。



「遊びだったの?」


「いや、本気だったよ」


じゃあどうして?


「でも俺じゃゆらを幸せにはできない」


身動きの取れない私を置いて高志が起き上がる。
―――言いたいことは沢山あった。
でもヘタレでカッコつけな私は何一つ言えなかった。


それは高志にとってひどく都合のいい女だったろう。
服を着る背中を見ながら私は初めて後悔していた。


それは奥さんに対する罪悪感ではなくて、自分の惨めさへの後悔・・・
自分の勝手さに気づくことなく、悲劇のヒロインは悲しみに打ちひしがれる。


そんな私を気にする事なく立ち上がり、高志は言った。


「連絡先は消して、俺も消すから。三年間ありがとう」


「・・・・・・・・・」



始まりがあれば終わりがある。
不倫ならそんなの尚更なのだろう。
でもこんなの想定外だった。


都合がいいけれど、二人が結ばれる未来を夢見ていた。


高志は私を振り返る事なく部屋を出た。
・・・もうこれで本当に終わりなんだろうか。


三年間も付き合いながら既婚者との恋は呆気なかった。
彼は奥さんの待つ家に帰り、私は一人ホテルに残された・・・これが現実。
残ったものは多分何も無い。







それからしばらくは泣いて暮らした。
せっかくの女子大生生活は散々なスタートだ。
彼氏と別れたとは友だちに愚痴ったけど、それが不倫だったことや子どもが出来たから切られたことは誰にも言えなかった。


それから・・・また三年の歳月が過ぎた。
その間、私にも彼氏と呼べる人は何人か出来たけど、高志以上に好きになった人は居なかったし彼らを余り踏み込ませることはなかった。


怖いから。
傷つきたくないから。


だから長続きはしなかった。






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