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short story
第17章 犬と弟 / ayumi
―――そんな風に私はどんどんやさぐれていった。


「ちょっと!!ブロック使って片付けないのみーくんでしょ!!キーーーッ!!!!」


やり場のない怒りは全部友だちに。
あんなに穏やかで優しかったあゆ美ちゃんはみるみるうちに誰もが恐れるボスになった。





そして年中になった五月のある日、弟が生まれた。


「あゆちゃん、お姉ちゃんになったのよ」


「・・・・・・・・・」


生まれたばかりの弟は岩みたいで全然可愛くない。
それなのに皆が「美男子」だと褒めた。
「大きくなったら女の子を泣かすぞ~」だって。
馬鹿みたい。


「名前はね、遥斗っていうの」


「・・・岩五郎でいいのに」


私の呟きにも気づかないくらいお母さんは遥斗に夢中だった。
会いに行けばいつも遥斗を抱いていた。


そうこうしているうちにお母さんが退院した。
夜、緊張して寝室に行くとお母さんは今まで通り私をお母さんの布団に入れてくれた。


「お母さん!!」


「あゆちゃん、入院中は寂しい思いさせてごめんね・・・また今日から一緒に寝られるからね」


お母さんに抱きつくとお母さんが抱きしめてくれた。
やっぱり私はお母さんが大好きだ!


「フエッ・・・フェッ・・・」


お母さんの温もりに甘えて眠りかけた頃、遥斗が泣き出した。
するとお母さんは私から離れ遥斗を抱っこした。


・・・目が覚めてしまった。


「ハルくんどうしたの?お腹空いちゃった?」


私に背中を向けるお母さん。
遥斗におっぱいをあげるお母さん。
甘い声で遥斗に話かけて・・・


私が起きてるなんて気づきもせずに・・・


その時、玄関がガチャガチャしてお父さんが帰って来た。
お母さんは遥斗を抱いたままお父さんを出迎えるため寝室を出ていってしまった。


「・・・・・・・・・」


―――私は一人残された。
暗闇の寝室に・・・


弟なんか居なければあのまま寝られたのに。
一人になんてならずに済んだのに。

弟妹が欲しいなんて言わなきゃ良かった。
最初から犬が欲しいって言ってれば良かった・・・


その夜、初めて一人で寝た。
その日のことは結構大きくなるまで覚えていた。


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