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short story
第17章 犬と弟 / ayumi
「あゆ美、どうしてこんなことしたの?」


「・・・・・・・・・」


「あゆ美!」


お母さんに叱られた。
全然気持ちを分かってくれないお母さんが悔しくて悲しくて、ボロボロ涙が零れてくる。


「は、遥斗なんて全然可愛くない!」


「あゆ美・・・」


「何でも壊すし髪の毛も引っ張るし・・・お母さんだって遥斗遥斗って・・・こんなんなら弟じゃなくて最初から犬が欲しいって言えば良かった!!」


それだけ吐き捨てて私は和室の押入れに閉じこもった。


「お母さんはもう私のことなんてすきじゃないんでしょ!遥斗の方が可愛いんだ!!」


それから長いこと押入れの中で泣いていた。



「あゆちゃん」


お母さんが私を呼んだのは涙が引いた頃だった。
返事せずに黙っていたら押入れが開いた。


「ごめんね、ずっと我慢してたのね」


「・・・・・・・・・」


「こっちにおいで」


お母さんが両手を広げたら無性に甘えたくなって再び涙がボロボロ零れた。


「うわあああん!」


泣きじゃくりながらお母さんに抱きついて、するとお母さんが抱っこしてくれた。


「よしよし・・・」


お母さんの胸で思い切り泣いて落ち着くと、お母さんは頭を撫でながらこう言った。


「あゆちゃんはお母さんの宝物。でもね、ハルくんも同じくらい宝物」


「・・・・・・・・・」


「ハルくんはまだ赤ちゃんだからあゆちゃんより手がかかるけど、お母さんにとっては二人とも大切なのよ」


本当は「あゆちゃんの方が大切なのよ」って言って欲しかったけど・・・
お母さんの膝で「大切なのよ」と言われてとても安心したのを覚えてる。


「あゆちゃんとハルくんはこの世で二人きりの姉弟なんだからね」


その時のお母さんの言葉は当時の私には難し過ぎた。
でもそれからも節々でお母さんは私と遥斗にそう言って来た。


その言葉の意味は大人になって分かった気がする。
ほんの少しだけだけど。


話は戻りそれから私に姉心が芽生えたかといえばよく分からない。


でも歩くようになり、「お姉ちゃん」と私を呼ぶようになると少しだけ遥斗が可愛いく思えるようになった。





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