この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
short story
第19章 夏の欠片


「あっけなかったよ」



皆が帰り親族ばかりになった夜、一番上の春子おばちゃんが祖母の隣で呟いた。



「病室入ったらいろんな機械つけられててなぁ…お医者さんがでっけぇ声で呼べっつーから耳元で叫んで…」



昼間は元気だったのに、と祖母が嘆いた。



「それからはもう、すぐで…」



2番目の礼子おばちゃんが春子おばちゃんを見て口を開く。



祖父の傍で円を描くように座る私たちは眠る祖父に視線を向ける。



「入院嫌がってたからね、やっと帰れてお父さんもほっとしてるよ」



母と四番目の恵子おばちゃんが顔を見合わせて言った。



「爺さんにはよく遊んでもらったなぁ」



長従兄の聡兄があぐらをかいた姿勢を後ろ手で支え天井を仰ぐ。



「あんたは初めての男の子だから余計に爺ちゃんが喜んだんよ」


「自分の子は女ばっかだったもんねぇ」


「恵子も久美子も生まれたときお父さん『また女か!』って肩落として」


「だから久美子は私が名前つけたんよ。父さんが『何でも好きなのつけろ』っていうから」


「酷いでしょ!?」



母が嘆くと周りがどっと笑う。



「父さん今頃くしゃみしてるよ」


「別に悪口いってるんじゃないからね!」


「『うるせぇ!』って言ってるよ」



賑やかなみんなの傍らでただ祖父は静かに眠っていた。



「…亡くなったときはさ、涙なんて出なかったのに何で思い出話になると涙が出るのかね?」



笑っていた三番目の妙子おばちゃんがポロリと涙を零した。
それに釣られていとこの麻理ちゃんが手で顔を覆う。ティッシュを差し出す聡兄のうちの美咲ちゃんも目が赤い。
涙は瞬時にみんなに感染する。



あれだけ賑やかだった場は一瞬にして涙に包まれ、啜り泣く声が響いた。




.
/325ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ