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short story
第6章 ノスタルジックオレンジ/ haruto
「日和は俺だけじゃ不満?」


「私は一人だけなんて我慢できない。美味しいものだって毎日同じのばかり食べてたら飽きるでしょ?一度きりの人生なら沢山楽しんだ方が得じゃない」


「・・・・・・」


どこかで聞いた台詞だと思った。
俺は日和を高校時代の自分に重ねた。


だから日和が不特定多数と寝るのは本当の愛を知らないからだと思った。
それなら俺が教えればいいと・・・
それからすぐ俺は日和の部屋に転がり込んだ。


日和には嫌な顔をされた。
でも生活費も入れるという条件で日和の部屋に住み始めた。
それは他の男を寄せ付けない為でもあった。


生活費を入れる為に俺はバイトを増やした。
必然的に時間的なすれ違いも多くなった。
でも満足させれば他の男に目がいかなくなるだろうと時間があれば日和を抱いた。
それでも日和の男遊びは止まらず・・・
避妊具の残骸を見つけては喧嘩になり、男が来た形跡を見つけては言い合った。


苦しかった。
浮気は俺が気付いただけで何度もある・・・知らない部分も合わせればかなりの数だっただろう。


一年が過ぎた頃は毎日喧嘩していた。
それなのに不思議と別れようとはしなかったし喧嘩してもセックスはしていた。


日和に当てつけて俺も浮気をしたりした。
日和が浮気に気づいても怒ることは無かった。
それが虚しくて、いつの間にか俺はつまみ食いさえしなくなっていた。
こんな女でも俺は日和に俺だけを見て欲しかった。



「遥斗・・・遥斗、バイト遅れるよ」


昼間のセックスの後で眠っていた俺を日和が揺り起こす。
夕焼けでオレンジに染まった部屋はどこかノスタルジックで、裸の日和が切なく見えた。


「ん・・・」


「時間は守らなきゃダメだよ」


「・・・・・・・・・」


こんな非道徳的な人から出る道徳的な言葉も、もうすっかり慣れ親しんだ身体も・・・笑顔も、時々優しいところも悔しいけどたまらなく好きだった。


「日和、好きだよ」


「何よ突然」


「俺・・・日和が好きなんだよ」


「・・・ホラ行きな」


俺の告白に返事はない。
付き合ってるんだから今更必要ないのかもしれないけど俺は愛を感じたかった。


俺と日和の気持ちの温度差に気づき始めたのもこの頃からだった。








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