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short story
第6章 ノスタルジックオレンジ/ haruto
そんな日和もどうにか就職先が決まり、社会人になった。
俺は三年生になっていた。


そして大学時代と違って規則正しい生活になった彼女に俺は安心していた。
このまま真面目になって俺だけのものになるんじゃないかと仄かな期待もあった。
最後まで彼女を愛せるのは俺だけだという自負もあったし、何だかんだ日和も俺が好きなんだろうと思っていた。


夏になる頃から日和の仕事が忙しくなった。
仕事に慣れたせいだと俺は思っていた。


それなのに・・・


「遥斗、話があるんだ」


「何?」


「私好きな人が出来たんだ・・・別れたいの」


「・・・・・・・・・」


「この家からも出てって欲しい」





最初は何を言われてるのか分からなかった。
その意味を理解すると「その時」が来たんだと冷静に思った。
最後まで勝手だとも思った。


「・・・分った」


「うん、なるべく早めにお願い」



その時俺が抵抗しなかったのは格好つけだったのか、それとも抵抗しても無駄だと分かっていたからか・・・
もしかすると俺自身も本当は楽になりたかったのかもしれない。





こうして俺たちの二年は呆気なく幕を閉じた。
それから何人かに告られたりもしたけれど、とても誰かと付き合う気にはなれなかった。



日和との傷が癒えたのは別れから半年以上経っての事だった。
その頃から俺の恋愛に対する意識も変わって来ていて・・・


今度付き合う子は一緒にいるだけで癒される子がいいと思うようになっていた。
それは今までの俺にはありえない発想だ。


年・・・と言われればそうなのかもしれない。
でも、一緒に日常を楽しめるような子と付き合いたい。


そしてちゃんと好きになった子・・・
俺だけを見てくれるような子・・・




それから女遊びも一切止めた。
意識しての事じゃなく、自分が幸せになるにはどうしたらいいのかが自然と分かってきたからだと思う。



それから一年、俺も人並みに社会人になった。
社会人になったところで生まれて初めて母の日にお袋にプレゼントでもしてみようと五月のある日、会社帰りに駅前の雑貨屋に立ち寄った。






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