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short story
第7章 青春グラフティ /minami
日曜日、私たちはきーちゃんの家にやって来た。


「こんにちは~」


「いらっしゃい!上がって上がって」


通されたリビングには駿くんも居て、テーブルの上には例の物が。


「缶になんて入れたっけ?」


「これは私が帰って入れたの」


さすがきーちゃん。
缶にはメモ書きで日付と十年後に開ける事、開ける時にはお互いの家族も立ち会う事が貼ってあった。



「それにしても十年後絶対結婚してると疑ってないとこがすげーよな」


・・・と遥斗。


「確かに・・・」


「じゃあ・・・開けるよ」



皆に見守られ缶の蓋が十年ぶりに開いた。
そこにはノートをちぎった紙が幾つも入っていた。


「これはみなみ、これは私・・・これが私からみなみで、これはみなみから私・・・この二つが遥斗さんとパパに」


手際良くきーちゃんが手紙を仕分け、目の前には三通の手紙。


「開けてみろよ」


楽しみで仕方ないと遥斗が急かし、恐る恐る手紙に手を伸ばす。
まずは自分に宛てた手紙から。


ノートの切れ端を開くと中学生の文字が目に飛び込んできた。
それを隣から遥斗も覗く。



『十年後の私へ』


こんにちは、十年後の私は何をしていますか?
13歳の私は雑貨と梅昆布が好きです。






「梅昆布・・・渋いな」


「これは食べる方じゃなくて芸人ね」


「知らねー・・・」






そして数学と英語が苦手です。
この間のテストは20点でお母さんにおこられました。




「・・・・・・・・・」


「遥斗、何か言ってよ」


「言えねぇだろ」





将来は自分で雑貨を作って自分のお店を開きたいです。
あとは・・・特に書く事がありません。
十年後の私が十年後、幸せに暮らしてるといいなと思います♡




「みなみ」


遥斗が顔を上げた。



「十年も寝かせとく手紙なのに他に何かなかったの?」


「・・・それは私が一番思ってるよ」


私と遥斗は肩を落とすけど、きーちゃんと駿くんは何だか盛り上がっている。






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