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short story
第9章 天の川 /yuriko
「来ないわね・・・」
私はその時就職して二年目の駆け出し教諭だった。
その園には「なかよし組」という延長保育のクラスがあり、職員が一人ずつ・・・忙しい時には二人入ってなかよし組を週交代で回していた。
私は私の受け持ちの克己くんと雨の園庭を見つめながら、克己くんのお迎えを待っている。
今日、克己くんのお母さんに赤ちゃんが産まれた。
予定日より大分早かったようで、家族もバタバタしていて克己くんのお迎えまで手が回らない。
だからお母さんの弟さんがお迎えに来ることになっているそうなのだけど・・・
なかよし組が終わる時間を過ぎても克己くんのおじさんはやって来ない。
園には私と克己くんだけになっていた。
「おじさんお仕事忙しいの?」
「分かんない・・・」
あの頃は携帯なんかなかったし、克己くんのおじさんとも連絡の取りようがない。
困ったな・・・なんて思っているとキキッと門扉の開く音がして背の高い人が慌てた様子で入って来た。
「・・・おじさんかな?」
「うん・・・」
その人は「おじさん」と言っても私より少し上くらいだと思う。
傘も差さないその人は玄関先の軒下に入るとハンカチでスーツの水滴を拭った。
「あの・・・克己くんのおじさんですか?」
「はい」
「良かったね克己くん、おじさん来たわよ」
でも克己くんはモジモジして、おじさんも何だかよそよそしい。
「・・・行こうか克己」
「・・・・・・・・・」
克己くんが頷いた。
でもその人は傘を持っていなかった。
「・・・お帰りは歩きですか?」
「いや、車です」
雨に霞む園庭の門扉の前には黒のセダンが停まっていた。
「それなら車までお送りしますね」
ポンと傘を開き克己くんとその人に傘を差し出した。
「私は結構ですから」
「でも濡れてしまいますよ。風邪を引いたら大変ですから」
「でも私が入ったらあなたが濡れてしまう」
サラリと発せられた台詞にドキッとしてしまった。
私はその時就職して二年目の駆け出し教諭だった。
その園には「なかよし組」という延長保育のクラスがあり、職員が一人ずつ・・・忙しい時には二人入ってなかよし組を週交代で回していた。
私は私の受け持ちの克己くんと雨の園庭を見つめながら、克己くんのお迎えを待っている。
今日、克己くんのお母さんに赤ちゃんが産まれた。
予定日より大分早かったようで、家族もバタバタしていて克己くんのお迎えまで手が回らない。
だからお母さんの弟さんがお迎えに来ることになっているそうなのだけど・・・
なかよし組が終わる時間を過ぎても克己くんのおじさんはやって来ない。
園には私と克己くんだけになっていた。
「おじさんお仕事忙しいの?」
「分かんない・・・」
あの頃は携帯なんかなかったし、克己くんのおじさんとも連絡の取りようがない。
困ったな・・・なんて思っているとキキッと門扉の開く音がして背の高い人が慌てた様子で入って来た。
「・・・おじさんかな?」
「うん・・・」
その人は「おじさん」と言っても私より少し上くらいだと思う。
傘も差さないその人は玄関先の軒下に入るとハンカチでスーツの水滴を拭った。
「あの・・・克己くんのおじさんですか?」
「はい」
「良かったね克己くん、おじさん来たわよ」
でも克己くんはモジモジして、おじさんも何だかよそよそしい。
「・・・行こうか克己」
「・・・・・・・・・」
克己くんが頷いた。
でもその人は傘を持っていなかった。
「・・・お帰りは歩きですか?」
「いや、車です」
雨に霞む園庭の門扉の前には黒のセダンが停まっていた。
「それなら車までお送りしますね」
ポンと傘を開き克己くんとその人に傘を差し出した。
「私は結構ですから」
「でも濡れてしまいますよ。風邪を引いたら大変ですから」
「でも私が入ったらあなたが濡れてしまう」
サラリと発せられた台詞にドキッとしてしまった。