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万華鏡
第2章 視姦
私の目線は思わずその長い指先に、先輩が手に取ったその本に向いて。



『こころ』



ーー‥ 私も読んでみようかな。



夏目漱石のその本は国語の教科書でしか読んだことの無いものだった。

先輩が読んだ本。
その長い指で触れたその本のページを私もめくってみたかった。



ーーただ、純粋にそう思って‥。



***



その日から、その先輩が気になって仕方が無くて。
毎日図書室へ足を運ぶ度、彼の姿を探す。



いつもの場所に座って、静かに読書している姿に心がときめいて。

その姿、仕草をを見る度に、ドキドキした。



はじめは‥。
見ているだけで良かった。その綺麗な顔や、静かな佇まいに心が引かれた。



一人の男性というよりは憧れのひと。そんな位置付けで。出来るだけ気づかれない様に、そっと彼を見つめていたけれど。



その指をじっと見つめていたら、少しだけ‥、欲がでて。



見つめているだけで良かったー‥から、もっと知りたいに変わってー‥。



先輩の借りた本を追いかける様になった。




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