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英里を調教
第15章 エクストラ・ストーリー1 英里の初めてのアルバイト
「バイト? 私?」
「うん、お願い」
「私、バイトとかしたことないよ」

 英里の両親は、過保護と言うほどではないが、一人娘の英里を大事にしている。
 余るほどではないけれど、考えて使えば十分なほどの金額のお小遣いももらっている。
 しかも英里は、性格からか、そんな両親の影響からか、もらった直後はほとんどお金を使わず、次のお小遣いがもらえる日が近付いてからやっと、好きなものを買ったりしている。
 なので、お金に困ったこともないし、両親も許してくれなさそうだしで、今までバイトをしたことがない。
 何も英里の家が特別お金持ちだったり、過保護だったりするわけではない。
 高校生ではバイト経験のある生徒のほうが少ないかもしれない。

「大丈夫、簡単な仕事だから。英里ならすぐ慣れるよ」
「うん…私で大丈夫かな」
「平気平気。バイト代も、その日のうちにもらえるように店長にお願いしておくからさ」
「うん…」

 由美子のバイト先には英里も行ったことがある。
 いろんなものを売っている雑貨屋さんだ。
 インテリア雑貨から、ちょっとしたパーティーグッズまで。
 見ているだけでも楽しいお店だ。
 由美子はそこで接客や、レジ打ちのバイトをしている。

 お店自体は知っているお店だし、不安はない。
 確か優しそうな店長さんがいたはずだから、きっと仕事も丁寧に教えてもらえるだろう。
 由美子がチケットが手に入ったと、喜んで教室で跳ねていた姿も覚えている。
 
 由美子は仲のいい友達の一人。
 中学生の頃からの友達で、三年生になって同じクラスになったのを喜んでくれた、英里にとって気の合う友達の一人だ。
 高校生になって、髪が茶色くなって、制服のスカートも英里よりもずっと短くした。
 多分、入学してから出来た彼氏の影響だ。

 でも、見かけは変わっても、ずっとずっと仲良くしてきた友達の一人。

 その友達が困っていて、しかもずっと念願だったライブに行きたがっている。

 どうやら断れないな。

 英里は、ちょっと溜め息をつくと、由美子の頼みを引き受けた。
 本気で喜んでくれた由美子の顔を見て、まあいいか、と思ったりもした。

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