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英里を調教
第15章 エクストラ・ストーリー1 英里の初めてのアルバイト
 バイト当日。
 英里は学校で受験したい大学のリストを学校から受け取って、ちょっとした進路相談のような話をし、その後バイト先に向かった。
 電車で数駅。以前行った海の近く。
 学校に寄ったから制服のまま。
 今日は天気が良くて、ブレザーがいらないくらい暖かい。

 ちょっと嫌な思い出のある海から目を逸らし、反対側に広がる住宅街へと向ける。
 その住宅街の、もうちょっと奥に目指すお店がある。

 外から見ると、こじんまりとした、でも雰囲気のいいお店。
 木目の浮き上がる、木の壁。
 少し古い建物だけど、手入れがきちんとされていて、それが店長の人柄を思い起こさせて、緊張気味の英里は、ちょっと安心する。
 入り口の扉。木の枠にガラスをはめ込んだ扉を開けて中に入る。

 ちりん、ちりん。

 扉に付いた鈴が来客を告げ、由美子と店長が出てきた。
 店内は、クラシックらしい音楽が流れている。
 重厚なクラシックではなく、どことなくリラックスして聞けるような音楽だ。

「ああ、英里」
「来たよ」
「うん、ホントにありがとう。あ、紹介するね、店長の橘さん」
「こんにちは、店長の橘です」

 にこやかに挨拶をする店長。
 小太りのお腹に、薄くなってきた髪の毛。
 どことなくさえない印象だが、いい人そう。
 二人とも肩から店の名前の入ったエプロンをして、いかにも仕事中という感じ。

「よろしくお願いします」
「うん。由美子ちゃん、まだ時間あるんだっけ。仕事教えてあげてくれる?」
「は~い。じゃあまずこれ、はい。洗ってないのこれしかなくって」

 由美子が英里に手渡したエプロンは、二人がつけているものと違い、腰に巻くタイプのものだった。
 二人のエプロンが可愛かったので、少しガッカリしたけれど、制服のブレザーを脱いでリボンを解き、ブラウスの腰の辺り、スカートのホックの一番上あたりにそれを結びつける。

 うん、なかなかいいかも。お仕事って感じ。
  
 ちょっと英里はいい気分。
 倉庫仕事とかはないから、汚れたりしないからそれでガマンしてねと由美子は言うが、英里は十分満足。
 この後のことを思ってか、由美子のテンションは高い。
 由美子は商品をいくつか手に取り、英里をレジに誘うと、やり方を教えた。
 
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