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第13章 重なる唇

頭の中がさっき見た二人の姿で埋め尽くされてどうにかなりそうだった。




――――真くんに触らないで。




真くんの肩に触れる里奈ちゃんの手を払い除けたい、
そんな強い衝動―‥。




「さっきの喧嘩‥、どうなったんだろうね――」




人の声が聞こえて。
ここにしゃがんでいたら変に思われちゃう。
そう思った私は立ち上がり、家に向かって歩き出した。


片桐さんという優しい彼氏がいるのに、こんな気持ちになるのは間違ってる。


片桐さんと付き合い始めた頃から感じはじめていた、
微かな違和感。


でも‥。

その優しさは心地良かった。


私の心は血を流していて、誰かに慰めて欲しかった。
片桐さんに、大丈夫だよって言って欲しかった。



臆病者な私は違和感よりも、その居心地の良さに手を伸ばして―‥。



真くんに対する、
どうにもならない気持ちをもて余して。

訳のわからない独占欲に心が蝕まれ、
そんな自分が嫌で仕方が無かった。