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アンバランスなsweet
第15章 やり直す為に
「里奈といれば‥‥作品を制作する意欲が溢れてくる。出来た作品はどれもこれも素晴らしく見えた。

これ以上の作品なんか存在しない。

そんな傲慢な態度。

傲慢さは作品を荒らしていく。
俺は満足な作品を造れなくなったよ。

里奈から貰ったその曇りないインスピレーションを形に出来ないイライラが俺を更に傲慢にした。

でも―――認めるのが怖かった。

―――里奈にそんな俺を知られたく無かった」




そう言って。
卓さんはその苦い液体を一気に飲み干した。


私には卓さんに掛けてあげる言葉が無い。


その心からはまだ、赤い鮮血が溢れていて。
卓さんのその心も躯も染め上げているのに、
哀しい朱色に染まったその瞳は、
苦しさの奥‥‥何も映してはいなかった。



私はただ、話を聞くことしか出来なくて。

卓さんの中に渦巻く嵐を見ていることしか出来なくて―――。




「傲慢な自信の末の、同僚とのトラブル。
俺は勤めていた工房をやめて、フリーになった。

作業場を持たない俺は‥‥既に硝子細工の作家とは言えない。
趣味でそれを造る唯の無職の男でしかなかった。

プライドを捨てて頼み込み、作業場を確保し、
作品を造るその日々は、
―――里奈との幸せな日々を食いつぶして行ったんだ」


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