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アンバランスなsweet
第16章 熱情

男が不意に窓の外に視線を向けた。
目が――一瞬あったような気がした。
見覚えのあるあの瞳。
そこにはアイツがいたのだ。
里奈ちゃんの元カレのあの男――卓が。
プップップ――――…‼‼
信号が替わっても発進しない俺に後部車からのクラクションが鳴らされた。
俺は慌てて車を走らせる。
――なんであの男と紫乃が一緒にいるんだ?
喫茶店の駐車場は少し離れた場所にある。
歩かなきゃならないその距離がもどかしくて。
――診療所の駐車場に止めたほうが早い。
あの男と紫乃が一緒にいる。
それが俺は許せなかった。
里奈ちゃんが――。片桐さんが――。
周りの事情に振り回されて。色々我慢をしていた俺だけれど。
――俺は紫乃に会えなくても、他の男はイイのかよ。
その時の俺の頭のなかにはその事実しか無くて。
紫乃をその場から連れ去る――。
それしか頭には無かったのだ。

