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アンバランスなsweet
第21章 覚悟

『女の子には、好きな男の色に染まりたいタイプもいるぜ?
紫乃ちゃんもそうかも知れないとは考えないのか?』
熊さんの言葉に違う!と俺は首を振る。
多かれ少なかれそんな気持ちになる事はあるかも知れない。でも色に染まるのと、自分の色を無くすのは違うと思う。
お互いの色に染まりながら
新しい色になるのが
俺の知る紫乃はそんな人形みたいな女じゃない。
『まことー、俺は片桐に幸せになって欲しいだけなんだよ。
傷ついたアイツを知っているからさ』
『亜子ちゃんが死んでもう、三年…経つんだな』
片桐さんの昔の彼女、亜子さんはもうこの世にはいなかった。
血液の癌―――急性白血病で亡くなった彼女は、病気が発覚して僅か半年の命だったんだそうだ。
発病は亜子さんの誕生日の一週間前……。
会社の検診で異常が見つかり、再精査、大学病院への紹介、入院…とあれよあれよと進んで。
その時、まだ亜子さんとは他人な片桐さんは、その病と戦う亜子さんに関わる事が難しかった。
何より病気の性質上、見舞いにいっても面会謝絶で会えないまま、片桐さんにとっては訳も解らないままに過ぎたその時間。
何もしてやれない自分を責めるかしかない、その地獄のような日々。
結婚の約束――亜子さんに内緒で、9月生まれの亜子さん誕生日にプロポーズを計画していた片桐さん。
それなのに。その想いを告げられないままに。
この世を去った亜子さん。

