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アンバランスなsweet
第22章 波の音と恋の終わり

やはり知られていたか、そう思った。
俺の気持ちがいつ片桐さんに知れたのか、それは俺には解らない。
しかし、思い当たる節はある。
俺の周りの奴等は、紫乃の事を呼び捨てで呼んだりしなかった。
紫乃と俺の同僚達とが会った回数だって、ほんの数回。
それも熊さん夫婦の主宰の飲み会でしか顔を合わせた事は無い筈だ。
呼び名としては、あぁ、あの『大きい娘』や『ノッポちゃん』が定番で。
もう少し知り合えば『片桐さんの彼女』もしくは『紫乃ちゃん』に変わる感じだった。
まぁ、普通はそんなもんだろ?
特に親しくなけりゃ、そこら辺が妥当な筈で。
その中で、俺だけが、アイツのことを『紫乃』と呼び続けた。
片桐さんが嫌がっている。それも承知の上で、だ。
俺だって。
紫乃が片桐さんの彼女になった時点で、変えようとは思ったが。
―――紫乃は紫乃だ。
そう呼ぶ事が俺の中では当たり前で、それ意外しっくり来なかったんだ。

