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アンバランスなsweet
第22章 波の音と恋の終わり

―――呼び名ぐらいイイだろ?
そう簡単に、俺は思っていた。
たかが呼び名。
でも、どうでもイイなら俺が紫乃と呼ぶのを止めたら済む話で。
片桐さんが拘るのと同じように、それを譲れない自分がいる。
それが出来ない俺は……。
「チビなお前に、小柄な里奈ちゃんはぴったりじゃないか。
お前ら仲いいじゃん。まるで夫婦漫才みたいな掛け合いでさ。
熊さんからの頼みとはいえ、何ともおもってないならあんなにマメに診療所に里奈ちゃんを迎えに行かないぜ、普通」
診療所にマメに通ったのは、もちろん里奈ちゃんの為だ。里奈ちゃんは良い娘だし。妹みたいなもんだし。守ってやらなきゃ、そんな正義感からの行為だった。
でも…、それは。
本当にそれだけかと言われたら、違うのだ。
紫乃にちらりとでも会いたかった。だからその姿をいつも目で探す日々。
職員入口。
その診療所の裏口なんて、理由が無しには部外者は立ち入れない。その、バックステージパス的な立場に便乗し、利用した。
「俺が好きなのは里奈ちゃんじゃないです。
里奈ちゃんも俺の事をそんな風には見ていない。
そんな俺たちにお似合いだと言われても互いに迷惑なだけです」

