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アンバランスなsweet
第11章 不審な影
私がそう決心するのに充分な言葉だった。



「プライベートは白紙だった紫乃ちゃんにも、春がきたねぇ」



――紫乃ちゃんの彼氏はどんな人?と言う啓子さんからの質問に、私はゆっくりと片桐さんを思い浮かべながら答えていった。



ほんの少し胸の奥の真くんを思う気持ちが痛むけれど――。



――片桐さんの優しさは痛む心をくるんでくれるから。

――忘れさせてくれるから‥。



お茶に、恋バナ。

啓子先輩のクッキーは美味しくて。疲れた頭に糖分を補給した。



女子が三人集まってそんは話を始めたら、15分の休憩はあっという間に過ぎてしまう。

事務長も煙草休憩から戻ってきたから、またレセプト業務の再開だ。



静かな事務室に紙を捲る音と、集計したカルテを締めるペンの音が響き渡って。


休憩から二時間経って私達は今日の分のノルマを終えたのだ。



*****



「10時回っちゃいましたね。おうち大丈夫ですか?」



仕事とはいえ既婚者の啓子先輩。娘さんもまだ幼いので、おもわず尋ねた紫乃の言葉に、




「大丈夫、レセプト中は家族が協力してくれるから!」

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