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煮詰めたシチュー
第11章 「星と僕たちのあいだに」 あとがき
私はテレビ世代の人間で、たとえば小説を読んでいても、今までに見た映画やドラマのワンシーンをごく自然にあてはめてしまうことが多いです。
それは現代人なら当たり前のことなのだと思いますが、映像が身近になかった世代の人たちが、当時の小説や新聞記事をどんなふうに心の中に描いたのか興味のあるところです。
見たこともない、自分の経験し得ない物事を頭の中でどう処理したのか。
ものすごく想像をふくらませたんでしょうね。
思い描いた事と実際とはまったく違っていたのかもしれませんが、憧憬に焦がれることのできる心の豊かな時代だったのではないかと思います。
現代に生きる私の場合、「星僕」は、やはり劇場で映画を観るように心の中のスクリーンに登場人物を描いていました。
それは演者に指示する監督の目線ではなく、完成した映画を観る視聴者目線で港の倉庫を眺めていました。
棲家だけでなく、南信州は阿智村の星空も一緒に眺めましたし、直樹と麻衣が海浜公園で戯れるのも、早苗と渡瀬が病室で心を通わせあうのも、すべてつぶさに見つめてきました。