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奴隷からのはじまり。
第1章 いち、奴隷になってよ。
愛乃がいうとおり、系統は違うものの、玖路香も同じくらい美しい。しなやかで細い身体を、エンジ色の制服に包み、七センチ高いところから愛乃を見下ろす。大きな瞳はくっきりした二重で、淡く薄い口唇は、微笑むと何ともいえず愛らしい形になった。栗色の髪は肩に届かない長さで、前髪以外は弱めにパーマを当てている。
玖路香は有名ブランドのデザイナー夫婦の娘に生まれ、幼い頃からファッションに関心を持っていたので、私服姿は雑踏でも目立つくらいにおしゃれだった。常にヒトから求められる立場の愛乃が、玖路香をいちばんの友人に選んだのも、そういう突出した部分があったからかもしれない。
それでも、その地位は決して永遠を約束されたものではなかったので、玖路香は、常に張りつめた気持ちで、愛乃の隣をキープしていた。
「ねぇ、くうちゃん」
昼休みの終わりのチャイムの合間に、愛乃が甘えるような声を出して言う。
「今夜、うちに遊びに来ない? 誰もいなくて、退屈なの」
自宅への招待は初めてだった。放課後に街や図書館でともに過ごしたことはあったが、彼女の家に行ったことはまだなかった。きっと、玖路香の家同様、大きくて立派な屋敷なのだろうが、なぜか、現実に存在していないようなイメージもあった。愛乃自身に生活感がとぼしく、寝たり食べたりする場所の風景が浮かびにくかったのだ。母は亡く父も不在がちという家庭環境が、よけいにそう思わせたのかもしれない。
「来てくれてありがとう、どうぞあがって」
教えられた場所に足を運んだら、門が開いて、真っ黒なドレスを着た愛乃に迎えられた。胸元が少し開いて、白いデコルテが視線を誘う彼女の私服に、玖路香は思わず少し、息をのむ。
古い城のような愛乃の家は、アンティークの家具とランプの似合う、想像どおり生活感のないところだった。
彼女の部屋へ通されるのかと思ったが、どうやらそこではないらしく、さらに階段を上った四階へ案内される。使用人も、玄関で見送ったきりでついてはこず、玖路香は、背中が開いたドレスの後ろ姿を見つめながら、少し不安にかられた。
「ここ、入って」
やがて、突き当たりの部屋のドアを開けた愛乃が、やや低い声で促す。
玖路香は有名ブランドのデザイナー夫婦の娘に生まれ、幼い頃からファッションに関心を持っていたので、私服姿は雑踏でも目立つくらいにおしゃれだった。常にヒトから求められる立場の愛乃が、玖路香をいちばんの友人に選んだのも、そういう突出した部分があったからかもしれない。
それでも、その地位は決して永遠を約束されたものではなかったので、玖路香は、常に張りつめた気持ちで、愛乃の隣をキープしていた。
「ねぇ、くうちゃん」
昼休みの終わりのチャイムの合間に、愛乃が甘えるような声を出して言う。
「今夜、うちに遊びに来ない? 誰もいなくて、退屈なの」
自宅への招待は初めてだった。放課後に街や図書館でともに過ごしたことはあったが、彼女の家に行ったことはまだなかった。きっと、玖路香の家同様、大きくて立派な屋敷なのだろうが、なぜか、現実に存在していないようなイメージもあった。愛乃自身に生活感がとぼしく、寝たり食べたりする場所の風景が浮かびにくかったのだ。母は亡く父も不在がちという家庭環境が、よけいにそう思わせたのかもしれない。
「来てくれてありがとう、どうぞあがって」
教えられた場所に足を運んだら、門が開いて、真っ黒なドレスを着た愛乃に迎えられた。胸元が少し開いて、白いデコルテが視線を誘う彼女の私服に、玖路香は思わず少し、息をのむ。
古い城のような愛乃の家は、アンティークの家具とランプの似合う、想像どおり生活感のないところだった。
彼女の部屋へ通されるのかと思ったが、どうやらそこではないらしく、さらに階段を上った四階へ案内される。使用人も、玄関で見送ったきりでついてはこず、玖路香は、背中が開いたドレスの後ろ姿を見つめながら、少し不安にかられた。
「ここ、入って」
やがて、突き当たりの部屋のドアを開けた愛乃が、やや低い声で促す。