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Withdrawal Symptoms
第4章 地獄の幕開け
肩で息をする私を見て、彼は愉快気に喉を鳴らした。
「泣くほど良かった? 俺とのキッス」
テカテカと光る自身の唇を一舐めし、私を上からじっと見つめる。

「うぅ……」

ゲホゲホと咳をしながらしゃくり上げる私の姿を見て、彼は更に興奮した様だ。

「そういう顔、そそる。……可愛い」

お兄ちゃんは微笑すると美しい顔を歪めた。

ーーそれはまるで悪魔の微笑みだった。

「もっ……やめっヒッ……やめてぇ」

腕で顔を隠しそう懇願する。
忘れたくなかった。“彼”との、最後とも呼べるキスの感覚をーー
だが悪魔はそんな純朴な想いさえ、全て消し去る。
それも、最悪な、方法で。

彼は泣きじゃくる私に囁いた。
「ねぇ、どっちが快かった? アイツと俺のキス」
「……意味わかんないっ」
「見えてんだよ、お前らが路端でやってんの。この窓から丸見えなんだよ」

"見てた"じゃなくて……?

黙っていると彼は幾らか声の音量を上げた。

「答えろよ、なあ。あんな男のキスと俺の、どっちが良かったんだよ」

あんな……オトコ?

彼のその言いぐさに私は頬の肉を引き攣らせた。
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