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Withdrawal Symptoms
第4章 地獄の幕開け
髪を乱暴に掴まれ無理矢理顔を正面に向かせられる。私は頭皮の痛みに顔を歪めた。殴られた衝撃で唇は切れてしまったようで、鉄の味が口内に広がる。ズキン、ズキンとぶたれた頬が脈打つように痛んだ。お兄ちゃん……最低だよ。私は殴られたショックと痛みで涙を流した。嗚咽を漏らし、肩を震わせる。口に手を当て泣き声を抑えようとするも、無理だった。こんなに泣いては次の日大変な事になるかもしれない……。顔が。口元を押さえた手には血が少し付着していた。

「うっ……酷いよ……」

そう言うと堰を切った様に涙がボロボロと溢れ出した。
痛くて。辛くて。痛くて。痛くて。いたい。

何より、初めてお兄ちゃんに殴られた事の痛みが一番痛いよ……苦しいよーー

その様子を見ていたお兄ちゃんは、"……美香"と呟き私の肩に触れようとした。
けれどその気配に気付いた私の肩はビクリ、と大きく揺れた。
……お兄ちゃんに、触れられたくなかった。
それに気づいたのか彼はチッと舌打ちをすると俯いた。
そしてフッと鼻で笑うと正に吐き捨てる様に、冷たい言葉を私に投げ付けた。
お兄ちゃんの表情は髪に隠れていて見えなかった。


「もういいや、お前抱く気失せた。そんな顔で泣かれたって勃つもんも勃たねえわ」

お兄ちゃんは私から距離を取ると枕側のベッドに腰掛けた。その様子を見て、本当に抱かないんだと私は安堵した。こんな状況であるのに、私は今、ホッとしている。

「……う、ん」


良かった。


そう安心していた時、右肩に衝撃が走った。
その衝撃に、息が吸えなくなる。胸が苦しい。

お兄ちゃんは、無言で立ち上がると片脚で私をベッドの上から蹴り落とした。

「……あッ」

彼は床に倒れ込んだ私を冷たく見下げて言った。



「出てけ」



私はその言葉の意味を理解するとフラフラと立ち上がった。そして時折短い嗚咽を漏らしながらドアノブに手を掛けた。


ガチャン。
私が部屋を出たすぐ後、乱暴にドアの閉まる音がした。



その音は何かが切れた音と良く似ていた。
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