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やさしいんだね
第2章 情熱は二種類
 小百合は身長153センチ、体重は37キログラム。
 ごく平凡な中学2年生らしい、肉付きの薄い身体。

 その薄っぺらい身体に、お椀をふたつ並べてひっくり返したような乳房がくっついている。
 違和感を感じるほどに、豊満すぎるかたちで。


「小百合ちゃんがもし息をしていなければ、部屋に飾ってずっと眺めていたいよ。このままガラスケースにでも入れてさ。仕事も行かずに、ずっと」


 色黒さんが自分を初めて抱いた日に言ったセリフを頭の中で反芻しながら、小百合は顔と同じように全身をくまなくチェックした。 


 柔らかく波打った茶色い髪は腰のあたりまで艶々と伸びており、一本一本すら美しい毛髪が、小百合の透き通るほど白い肌をさらに白く引き立てていた。
 そして細い身体の、くびれの目立つ腰の、更にその下。
 脚の付け根の中心には、一本線が入っているだけ。

 
 ガチのパイパン。
 ソンの下品なセリフが今となっては笑える。


 身体にも異常がないことを確認してから、小百合は再度制服を身につけた。



 こんな身体と顔だから、人気があるのは当たり前だと、ソンも小百合も理解している。
 要するに小百合は自分でも、自分の身体だけは他人よりも価値があると知っている。
 だからソンの誘いに乗ってこんな仕事を始めたわけだ。

 将来医者になるため。
 夢のため、学費のため、ならば。
 どんな男にだって抱かれることが出来る。
 これといって何の感情もなく。

 でもあの人にだけは、どうしてこんな気持ちになるんだろう。

 小百合ご指名の客は何十人もいる。
 なのにその中から、何の迷いもなく一瞬にして色黒さんの顔を思い浮かべたのは、小百合の期待という部分が大半だったのかも知れない。


 これからあの大きな身体に抱かれるのかと思うと、甘い期待がからだの中心からじわりと滲んで溢れた。
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