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やさしいんだね
第2章 情熱は二種類
 ソンが小百合に持ちかけた儲け話は援助交際斡旋、というよりデリヘルに近い。

 事実、ソンの本業は18歳以上の女性を雇った、デリヘル営業だ。

 しかし小百合のような18歳以下の少女たちはあくまでも本業とは全く別のルートで仕事を与えているんだと、本人は言う。

 小百合の知るところでは、18歳以下の少女たちを利用する客はみな紹介制の会員制で、利用料とは別に高い年会費をソンに支払っているはずだ。
 そこまでしてソンを頼るのは、自力で相手を見つけ出すにはあまりにもリスクが高いことを少女たちだけでなく、客自身も理解しているからに違いない。

 そして、ソンお抱えの少女たちの“容姿と具合の良さ”は、大金を叩いてでも他では得られぬものがあるからに違いない。

 それほどまでにソンは、様々な細心注意と少女選びに余念がないのだ。

「ソンあんた電話しつこすぎ」

 17時55分。
 約束の時刻より5分早く経営者であるソン自ら運転するライトバンに拾われた小百合は、昼間のしつこい着信に対し文句を述べながら助手席に座りシートベルトに手をかけた。

「だってああでもしなきゃ小百合ちゃん、絶対電話に出ねぇだろぉ?小百合ちゃんは気分屋さんだからねぇ。ソン君も苦労すんだよ。さぁ出発しますよお姫様」
「は?こんな勤勉な子を捕まえて気分屋はないでしょ?忙しい塾の合間を縫ってわたしは」

 身体を動かした拍子にバックミラーの中に人影が写っていることに気付き、小百合は手を止めた。見ればメガネでみつあみの、セーラー服の上からベージュのセーターを身に付けた少女が緊張した面持ちでミラー越しに小百合を見つめ返している。

 小百合は後部座席を振り返り、初めて見る同い年くらいの少女に会釈した。

「こんばんは」

 職業柄無意識に笑顔を浮かべた小百合とは裏腹に、少女はやはり緊張した面持ちのまま小百合に小さく頭を下げて見せただけだった。

 ソンの笑い声が車内に響く。
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