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泡のように
第16章 15.
 先生の指の間に挟んだままだった火のついた煙草をそっと抜き取り、自分の唇の間に挟んだ。
 吸い込めば、肺の中が有害な煙でいっぱいになる。
 おっさんもお母さんも先生も、こんな人体に有害で高価なもの、どうして好んで吸いたがるのかよく分からない。
 けれど、最近私はこうして自ら有害な煙を肺の中に取り込む機会が多い。お肌と脳に悪い。わかっているのに。
 この、ホッとする感じ。
 男に好きだよって言って抱きしめられた時の感覚に似てる、この感じ。

 初めてお兄ちゃんが私の身体の上に乗った時みたいな、この感じ。

 あんまりにも痛くて、死ぬかと思った。くらくらするような、目眩の中の、快感。

 好きだって言ってくれた言葉が嘘じゃなかったんだって、そんな気がした。
 今までに経験したことがないような、愛情で満たされた気持ち。
 これがなきゃ、もう生きれない。
 って、思った。
 10歳だったのに。

 泥のように眠る先生の身体に柔らかいタオルケットをかける。
 ダウニーのきつい香りとタバコの匂いが部屋の中に混在する。
 セックス出来なくて残念がっているのは、私のほうかも知れない。
 ティッシュ箱を手元に引き寄せる。

 絶頂はお兄ちゃんに教えられてたから知ってた。
 快楽をひとりで得る方法も教わってた。
 子供の頃は友達もいなかったし、暇さえあればパンツの中に手突っ込んで、オマタをぐちょぐちょにさせてたな。
 あんな染みパンツが毎日毎日洗濯機に入っていてお母さんは気付かなかったんだろうか。
 もしかしたら気付いていて、知らないふりをしてくれていたんだろうか。
 だとしたら、お母さんって立派な人。

 下着の中にそっと指を入れると、生理用品と擦れてがさがさと鳴った。
 もう少し私の指が太ければいいのに。
 そうしたら、もっと大きい快感を得られるのに。

 でも、快感と愛情が一度に得られるセックスは、ひとりですることの何百倍、依存性が高いだろう?

 淫乱なつもりもエッチなつもりもないんだけど。
 結果的に私はそういう女、ってことになる。
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