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泡のように
第16章 15.
 もういっそのこと3Pでもするか。

 などと、先生が広げた新聞に目を落としながら呟いたのは、翌朝のことだった。
 しかもそれは、若干焦げたりインスタントだったりする朝食を、私がこたつテーブルの上に配膳し終わったタイミングで。

「バカじゃないの」

 ただでさえ涌かない食欲が更に湧かなくなる発言を受けて、今まで何度か喉元まで出かけて、でも言わなかった言葉が、今日に限ってはすんなりと口をついて出た。
 極めて偏差値の低い女子高生に素で罵られた高校教師は黙って顔を上げると、怒るのではなく、少し驚いた様子で広げていた新聞を乱暴に閉じた。

「へぇ、山岸もついにそんなことを俺に言うようになったか」

 そして箸を握り、珍しそうに私を見つめながら両手を合わせる。
 こんな時だって先生は行動の端に育ちの良さを微妙に滲ませる。
 私の家族を立派な衆だと褒めた先生だけれど、先生の父親だって、地元で公認会計士事務所を経営している立派な人間だ。
 
「先生が変なこと言うからでしょ」
「でも悪くなさそうだろ?」

 ゲイの世界で例えるならばガチムチの大男2人が私のような地味で冴えない女を犯している姿って、ある筋の性癖を所有する人間なら興奮するかも知れないが、一般常識で考えたらただのホラーでしかない。

「絶対イヤ」
「そうか」

 先生は笑って、私の作った焦げた卵焼きを口に入れた。
 咀嚼して、飲み込んで、そして言う。

「じゃあ、俺と別れて兄貴んとこに戻るか?」

 インスタントのマルコメ味噌汁がこたつテーブルの上にこぼれ落ちる。
 
「どうしてそんなこと言うの」

 
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