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泡のように
第16章 15.
 もしかしたら私の顔の方がよっぽどホラーだったかもしれない。
 先生は呆然とする私に変わって「おいおいなにしてんだよ」なんて言いつつ急いでティッシュを箱から引き抜き、こぼれた味噌汁の上に置いた。

「なんでって・・・お前、兄貴のこと好きなんだろ」
「どうしてそう思うの」
「どうしてって・・・。さぁ、どうしてだろうな」

 これは別れ話なんだろうか。
 箸を持つ気すら起きない私の目の前で、先生は淡々と朝食を口に運んでいる。
 白いティッシュに茶色い味噌汁が吸収されていく。
 昨日、自慰のあとに使ったティッシュを思い出した。

「私のこと嫌いになった?」

 俯いた顔から涙がポタリと溢れ、膝の上で握る拳の上に落ちた。
 古典的な少女漫画のワンシーンのようで、冷める。
 有難いことに悦に入る余地はなかった。
 先生がすぐに否定したからだ。

「いいや全然。前より好きになったくらいだよ。その背徳感、むしろ悪くないぜ」

 マルコメを飲み干して、手を合わせて、茶碗を重ねて、そして、煙草に火をつける。

「狂ってて、いいよ。なかなか。マジで」

 煙草を挟んだままの人差し指で先生はTシャツの上から私のおっぱいをつついた。

「俺、最初っからお前と出会えてたらもっと幸せだったのにな」



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