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泡のように
第3章 2.
 教師のくせに何回言えば分かるんだよバカじゃねぇのいっぺんで覚えろよカスめ、心の中ではとんでもない悪態をつきつつも、毎回優しい声色で先生を安心させてあげる。
 何も知らない受話器の向こうの先生はめちゃくちゃ嬉しそうだった。

「ありがとなぁ、俺のためにそこまでしてくれて。俺のせいでほんっと山岸は淫乱になっちまったなぁ。ちょっと前まで処女だったのになぁ」

 チクリと胸が痛む。乳首でなく心臓のほうだ。
 他愛もない会話を一言二言交わして、電話を切った。ため息。


 先生に初めて抱かれた日、挿入角度が悪かったのか、単純にでかすぎたからなのか、血が出た。
 私は何も言ってない。
 先生が勝手に私を処女だと勘違いして盛り上がってただけ。
 エッ!血ぃ出てるじゃん!マジかよ、エロい身体してるからけっこう遊んでるだろって思ってたのに、ウワァー俺に処女捧げてくれたのか、すげぇ嬉しい。
 山岸ありがとう、大好きだ。

 先生は私を抱き締めてキスをした。

 ぶっとい腕の中で私は予想外な言葉に狼狽えまくった。
 だ、大好き・・・だと!?
 懐かしく、なんて甘美な響き!嬉しすぎる!
 本当は非処女なんですけど言うに言えない!
 ってワケで言い出すタイミングを逃し、現在に至る、的な。
 たぶん、あの時私が正直に非処女ですって言ってたら先生は私に大好きだ、なぁんて絶対言ってくれなかったと思う。
 先生の当初の目論見通り、一晩遊んで、またはある程度私の身体を満喫するまで遊んで、ポイ。ハイお仕舞い。だっただろう。

 今でも抱いてくれるのは、先生にメロメロぞっこんラブで勇気を出して処女捧げてくれて開発されるうち超淫乱になっちゃったエロくて従順なメス、捨てるには惜しい。代わりが見つかるまではもうちょい遊んでおこう、的な存在だからだろう。先生にとって私は。
 まぁどっちみち都合のいい女ってことだ。
 騙していると断定するには私の落ち度が低いとも言えるが、罪悪感は常に背中にべったり張り付いて離れなくて、苦しい。
 でも、今更真実を告白したら私たちの関係は破綻する。
 それだけは避けたい。
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