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泡のように
第19章 18.
 お兄ちゃんは暫く黙っていた。
 口を開いたのは、見慣れた住宅地に差し掛かった頃だった。

「秋芳さんは、本当に智恵子を嫁にもらうつもりなの?」

 厳しい表情なのは入り組んだ細い路地ばかりだからなのか、先生のことを考えているからなのか分からない。
 話していいものなのか、どうなのか。
 お兄ちゃんの心理が読めないだけに、悩んでしまった。
 私の心中を察してか、お兄ちゃんはまるで教師のように、っていうか教師なんだけど、悪事を働いた生徒を尋問するかのように「早く答えなさい」と回答を急かした。

「そのつもりらしいよ」

 私の誘導通り無事に先生のアパートの前に到着するや、お兄ちゃんは笑い出した。
 どうして笑っているのか、全く意味が分からない。
 お兄ちゃんは暫く肩を震わせて笑っていた。 

「なにがおかしいの?」
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