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泡のように
第20章 19.
 メタボおじさんは仕事の途中なのに事務所を出ると、昼間から私たちを廻らないお寿司に連れて行ってくれた。
 これまた、テレビドラマに出てきそうな、薄暗い感じの、値段が書いていないお寿司屋さん。

 その時ばかりはさすがの先生もジャージじゃなくて、地味に高そうなポロシャツとチノパンを身に付けていた。学校で教え子とセックスはしても、TPOだけはきちんとわきまえる性分らしい。

 一方私はというと、先生がメタボおじさんの事務所に行く途中に寄った大丸で買ってもらった、取り急ぎ清楚に見えるワンピースを着て、ああだこうだ語り合う成人男性2人を前にバカみたいに愛想笑いを浮かべて黙っているだけだった。

「それでな、まぁ、今日俺たちが親父に会いに来たのはな。電話でも話したけど。もっぺん家庭を築いてみたいって、思ったからでさ。要するに、再婚だよな。俺な、コイツと再婚したいって思ってんだよ」

 先生は淡々と語りながら、一貫いくらなのか想像もつかない光り輝く寿司を平気な顔して口に運んでいる。

 メタボおじさんは煙草を吸わない人間らしく、その代わり大酒飲みなのか、瓶で頼んだ焼酎を先生にお酌させつつ、ふーんと鼻を鳴らした。

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