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泡のように
第20章 19.
「それで一成。子供はどうするの?今回もつくらないの?」

 玄関から私たちを見送るお母さんは、まるでそこに私なんかいないかのような口ぶりで、先生の背中に言った。
 先生は家の前に停めたままにしていた黒いレクサスのドアに手をかけたまま振り向いて、先程のお母さんと同じような仕草で首を捻った。

「さぁ。どうだかね」
「どうだかねって、それはどういう意味なの」
「だってコイツまだ高校生だぜ」
「それが何よ。あなたはもう33歳なんだからそっちのが秋芳家としては問題よ。このままじゃリエの旦那が跡取りになっちゃうわよ」
「別にいいんじゃねぇの。優秀な跡取りで」
「そういうわけにはいかないでしょ。今からつくれば、そこの・・・あら、なんていったかしら、ごめんなさいね。智恵子さん?智恵子さんが卒業したあとに生まれるでしょ。それでいいんじゃないの?」
「おいおい、まだコイツの親に挨拶もしてねぇのにそんな・・・」

 ハハハ、先生は笑って、私の肩を唐突に抱いた。

「大人の事情で勝手なことばっか言われたら困るよな。なぁ?」

 笑う先生の顔のだいぶ下で縮こまる私は、お母さんの目にどう写ったのだろう。
 お母さんは初老の女性らしいたるんだ頬をきゅっと上げ、笑顔を見せた。

「とにかく、今度は仲良くしなさいよ。でないと、3度目はさすがにお金、出しませんからね」
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