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泡のように
第20章 19.
「さっき先生の実家に挨拶してきた。下に先生が来てるんだけど会ってくれる?今日がムリなら別の日にするけど」

 おっさんはマンガのようにポカンと口を開け、私を見つめている。
 しかしお母さんはフンと鼻を鳴らしただけだった。

「まぁ、だからそんな似合いもしないきちんとした服着てるってわけなのね。聞いてなるほど納得よ。ハイハイ。向こうの気持ちは分かったわ。3階までヒーコラ言って階段を上ってきてもらうのは申し訳ないしね。それに生憎今日はお父さんもお母さんもピザーラな気分で、あんたの旦那になる素敵な彼氏様に何かおもてなしする気分にもなれないから、悪いけど帰ってくれる?」
「そっか。わかった」

 立ち上がり、すぐに踵を返す。

「あぁ、そうだ。こんな娘でいいならぜひ、もってけドロボーってとこで、嫁にくれてやるって伝えておいて。それと、挨拶なんていらないわよ。ハッキリ言って会いたくもないの。お母さんね、生徒に手を出す教師だけはね、絶対に許せないタチなのよ」
「生徒って、先生って、智恵子、一体どういう」

 気の毒なおっさんは、ようやく口を開いた。
 けれども私はすでに玄関で履き慣れないパンプスを再び履いていて、素無視。

「でも婚姻届にさぁ、なんかほら、いるでしょ?保護者欄みたいなの。あれだけ書いて欲しいから、また来るよ。卒業するくらいに」
「あ、そう。分かった。じゃあその時また来なさい。1人でね」
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