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泡のように
第4章 3.
じゃ!と言って帰るわけにも、というか帰るつもりもなく、明るく元気な高校生の妹を演じてにっこり微笑み、いつもよりちょっと高いトーンでお兄ちゃんに話を振った。
「久しぶりだね。元気にしてる?」
「あぁ、う、うん。まぁ、なんとか、兄ちゃんは、フツウに」
「たまにはウチでご飯食べたらいいのに」
「い、いや、母さんも大変だし・・・」
「いつもなに食べてるの?ちゃんと自炊してる?」
「・・・うん、まぁ、なんとか」
会話終了。
全然話が続かない。
隣に住んでいるのに顔を合わせて話をするのは半年ぶりだから、仕方ないと言えばそうなるんだけど。
気まずい雰囲気の中お兄ちゃんの胸板に張り付いたパツンパツンのジャージに浮いた乳首を見つめていると、珍しくお兄ちゃんから口を開いた。
「な、なんか、ち、智恵子、顔色がすごく悪いね」
お母さんが見れば必ず「散髪しなさい」と言いそうな、ボサボサに伸びきった長い巻き毛の前髪の隙間から、お兄ちゃんの長い睫毛がオドオド瞬きしている。
睫毛の下に隠れた瞳は無駄に綺麗な鳶色だ。
そして、顔もまた、無駄に綺麗に仕上がっているのがお兄ちゃんの特徴である。
「そうかな」
恐ろしく青白いと予想される自分の頬に手を当ててみる。
冷たい。そしてかさついている。熱はないようだ。
「は、早く寝た方がいいよ」
私たちがフツウのキョウダイに戻った日から、お兄ちゃんは私を遠ざけようとばかりする。
自分から私を引き寄せたくせに。
「ほん、ほんと、早く帰ったほうがいい」
鳶色は終始オドオドキョドキョド。
エキゾチックに仕上がった端正な顔の薄褐色の頬にはクソ寒いというのに緊張からか汗が一筋流れている。
私たちの過去のせいでなくお兄ちゃんは元々ずっとこんな感じ。
対人恐怖症レベルの人見知りだ。
妹にすらこんな感じなんだから、見知らぬ女性とは挨拶するのがやっと。
お兄ちゃんがせめて秋芳先生くらい堂々とした男だったらちょっとくらいモテたかも知れないが、ここまでオドオドされたら女もオドオドしてしまうもんだ。そのためお兄ちゃんは知らない人が見たら3度見するレベルの顔と、同じく違う意味で3度見されそうな筋肉質な体格のわりに、まったく、全然、これっぽっちも、モテない。
「じゃあ帰ってサッサと寝るね」
「そ、そうしなよ」
「久しぶりだね。元気にしてる?」
「あぁ、う、うん。まぁ、なんとか、兄ちゃんは、フツウに」
「たまにはウチでご飯食べたらいいのに」
「い、いや、母さんも大変だし・・・」
「いつもなに食べてるの?ちゃんと自炊してる?」
「・・・うん、まぁ、なんとか」
会話終了。
全然話が続かない。
隣に住んでいるのに顔を合わせて話をするのは半年ぶりだから、仕方ないと言えばそうなるんだけど。
気まずい雰囲気の中お兄ちゃんの胸板に張り付いたパツンパツンのジャージに浮いた乳首を見つめていると、珍しくお兄ちゃんから口を開いた。
「な、なんか、ち、智恵子、顔色がすごく悪いね」
お母さんが見れば必ず「散髪しなさい」と言いそうな、ボサボサに伸びきった長い巻き毛の前髪の隙間から、お兄ちゃんの長い睫毛がオドオド瞬きしている。
睫毛の下に隠れた瞳は無駄に綺麗な鳶色だ。
そして、顔もまた、無駄に綺麗に仕上がっているのがお兄ちゃんの特徴である。
「そうかな」
恐ろしく青白いと予想される自分の頬に手を当ててみる。
冷たい。そしてかさついている。熱はないようだ。
「は、早く寝た方がいいよ」
私たちがフツウのキョウダイに戻った日から、お兄ちゃんは私を遠ざけようとばかりする。
自分から私を引き寄せたくせに。
「ほん、ほんと、早く帰ったほうがいい」
鳶色は終始オドオドキョドキョド。
エキゾチックに仕上がった端正な顔の薄褐色の頬にはクソ寒いというのに緊張からか汗が一筋流れている。
私たちの過去のせいでなくお兄ちゃんは元々ずっとこんな感じ。
対人恐怖症レベルの人見知りだ。
妹にすらこんな感じなんだから、見知らぬ女性とは挨拶するのがやっと。
お兄ちゃんがせめて秋芳先生くらい堂々とした男だったらちょっとくらいモテたかも知れないが、ここまでオドオドされたら女もオドオドしてしまうもんだ。そのためお兄ちゃんは知らない人が見たら3度見するレベルの顔と、同じく違う意味で3度見されそうな筋肉質な体格のわりに、まったく、全然、これっぽっちも、モテない。
「じゃあ帰ってサッサと寝るね」
「そ、そうしなよ」