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泡のように
第4章 3.
 ずっと落ち着かない様子でそわそわ身体を動かしている。
 普段からお兄ちゃんは私を前にするとある程度挙動不審になるが、ここまで挙動不審が目立つ相場は決まっている。

「もしかしてアメフト見てる途中だった?」
「えっ」

 図星だろう。
 お兄ちゃんは観る方もする方も、どちらも徹底したアメフト狂。
 BSあたりでNFLの試合放送なんかあれば何日も前からそわそわしているくらいだ。

 ドアの外に出て、じゃあねぇ~と笑顔で手を振る。

 お兄ちゃんは身体をすでに玄関奥の引き戸の向こうに消そうとしながらも「お土産ありがとうって母さんに言っといて智恵子もお大事に」と東京特許許可局レベルの早口で言った。

 そこでドアがガチャンと閉まった。



 お兄ちゃん、って言っても実のお兄ちゃんってワケじゃなくて、血の繋がってないお兄ちゃん。
 かといっておっさんの連れ子ってワケでもなく。
 だから私たちがしてたことは近親相姦とかじゃない。
 でも・・・うーん、篤志の存在って説明しにくい。



「お兄ちゃん、いた?」

 寒い寒いと呟きながら散らかった部屋に戻ると、お母さんはおっさんと共にお土産の饅頭をつまんでいるところだった。
 饅頭と同じまんまるい顔をしたお母さんは甘いものを摂取したためか、或いは私がいない隙におっさんとキスのひとつでもかましたのか、さっきより血色が良くなっていた。

「うん。お土産ありがとうって。アメフト見てたからすぐ追い返された」

 気付かぬふりをして立っているついでにポットのコンセントを差し込んだ。
 疲れた身体に濃く作ったココアでも流し込みたい心境。

「アメフトねぇ。それよりあの子、学校は上手くいってんのかしら」

 山岸家で学校といえば、教える側を指す場合が圧倒的だ。
 無論お兄ちゃんだって変わりはない。

「知らない」言ったと同時に笑ってしまった。

「お兄ちゃんってあんだけ人見知りなくせに、よく先生なんかになったよね。絶対生徒に馬鹿にされてるよ」

 一人でゲラゲラ笑う私に二人は呆れつつも、確かに、といった顔で見つめ合っていた。

 お兄ちゃんは大学を出てから隣市の公立中学校教諭として勤め出した。
 しかも体育の先生。
 あんな陰気で挙動不審な体育の先生って、普通いるだろうか。

「おと・・・健児さんとの約束だからねぇ。教師になるってのは」
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