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泡のように
第21章 20.
 気がついたとき、まず目に入ったのは薄グレーの不燃布で覆われた、天井だった。
 そして、景色がどんどん後ろに流れている、窓が。
 体全体を揺する振動と。
 耳には聞き慣れた男の声と、聞き慣れない女の声。
 BGMは、NFLの試合で流れてそうな、黒人ヒップホッパーの、ダミ声。

 どうしてお兄ちゃんの車の後部座席で自分が横になっているのか。
 復活したゾンビみたいな動きで起き上がっても、すぐには理解出来なかった。

「あ、起きた」

 助手席から黒い髪の、黒い瞳の女が振り返って私を見つめている。
 その隣でお兄ちゃんは、いつも通り陰気な顔で、バックミラー越しに私の阿呆みたいな顔を確認してから「ほんとだ」と肯定した。
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