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泡のように
第21章 20.
黒い瞳の女はエキゾチックで端正な顔を歪めて笑っていた。
しかし柔らかそうで綺麗な形の唇から覗く歯は、ヤニで黄色く変色していた。
「おまえ運がいいよ。アタシたちが来てなかったら今頃死んでたよ。熱中症で」
煙草を吸わないお兄ちゃんの車内に煙草の臭いが充満していると気付いたのは、黒い瞳の女の指のあいだに挟んであるものを視覚で確認したあとだった。
「篤志から妹は頭が悪くてどうもって聞いてたけどな。あんな時間に帽子もかぶらねーで墓参りしてるとか、ホント、バカ」
訳が分からないでいる私を笑いながら貶す黒い瞳の女を、お兄ちゃんが「アキホ」と静かに咎めている。
目の前にいるアキホという名の女こそが木戸の言った、お兄ちゃんと腕を組んで歩いていた顔射を戸惑うレベルの美女なのかも、と思ったのは、アキホが私に「そりゃ、どっちもバカだからおまえら上手くいかねぇんだよ」と、あけっぴろげに笑ったせいなのかも知れない。
しかし柔らかそうで綺麗な形の唇から覗く歯は、ヤニで黄色く変色していた。
「おまえ運がいいよ。アタシたちが来てなかったら今頃死んでたよ。熱中症で」
煙草を吸わないお兄ちゃんの車内に煙草の臭いが充満していると気付いたのは、黒い瞳の女の指のあいだに挟んであるものを視覚で確認したあとだった。
「篤志から妹は頭が悪くてどうもって聞いてたけどな。あんな時間に帽子もかぶらねーで墓参りしてるとか、ホント、バカ」
訳が分からないでいる私を笑いながら貶す黒い瞳の女を、お兄ちゃんが「アキホ」と静かに咎めている。
目の前にいるアキホという名の女こそが木戸の言った、お兄ちゃんと腕を組んで歩いていた顔射を戸惑うレベルの美女なのかも、と思ったのは、アキホが私に「そりゃ、どっちもバカだからおまえら上手くいかねぇんだよ」と、あけっぴろげに笑ったせいなのかも知れない。