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泡のように
第23章 22.
外は夕方だというのに、昼間となんら変わりなく蒸し暑かった。
レイナたちの部屋を出た途端、昼間に倒れたせいか、ちっさい脳みそが飽和状態になったからか、どっと疲れが出た。
身体が鉛のように重い。
お兄ちゃんの背中を追いかける足をエレベーターホールで止めたのは、そのせいでもあった。
「今日は会えて嬉しかった」
駐車場の方へ向かおうとしていたお兄ちゃんは私の発言を受けて黙って振り向き、やはり陰気な顔で私を見つめた。
「私は電車で帰るから。お兄ちゃんも、気をつけてね」
無言で佇むお兄ちゃんに笑顔を繕って手を振り、とぼとぼとエントランスへ向かって歩く。
たった1フロア降りるためだけに乗ったエレベーターの中で、スマホをチェックした。
先生から2度電話があったようだった。
たいした用件でないことは分かっていたけれど、早くエントランスの自動ドアから街頭に飛び出して、電話をかけ直して、先生の声を聞きたかった。
でなければ。
「ま、待てよ、智恵子」
声まで陰気なお兄ちゃんのことが、先生に指輪まで購入させたくせに、どうしても好きで、心の存在から消せずにいる自分に、気付いてしまうことを、じゅうぶんすぎるほど、理解していたからだ。
レイナたちの部屋を出た途端、昼間に倒れたせいか、ちっさい脳みそが飽和状態になったからか、どっと疲れが出た。
身体が鉛のように重い。
お兄ちゃんの背中を追いかける足をエレベーターホールで止めたのは、そのせいでもあった。
「今日は会えて嬉しかった」
駐車場の方へ向かおうとしていたお兄ちゃんは私の発言を受けて黙って振り向き、やはり陰気な顔で私を見つめた。
「私は電車で帰るから。お兄ちゃんも、気をつけてね」
無言で佇むお兄ちゃんに笑顔を繕って手を振り、とぼとぼとエントランスへ向かって歩く。
たった1フロア降りるためだけに乗ったエレベーターの中で、スマホをチェックした。
先生から2度電話があったようだった。
たいした用件でないことは分かっていたけれど、早くエントランスの自動ドアから街頭に飛び出して、電話をかけ直して、先生の声を聞きたかった。
でなければ。
「ま、待てよ、智恵子」
声まで陰気なお兄ちゃんのことが、先生に指輪まで購入させたくせに、どうしても好きで、心の存在から消せずにいる自分に、気付いてしまうことを、じゅうぶんすぎるほど、理解していたからだ。