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泡のように
第24章 23.
 気が付いたとき、私は団地の、お兄ちゃんの部屋で寝ていた。
 開けっ放しのカーテンから、濃いブルーの夜空に浮かぶ白い月が、柔らかい光を放っているのが視界に入った。

 お兄ちゃんは裸のまま、私の隣で熟睡していた。
 昼間の出来事に疲れたのは私だけでなかったらしい。
 いいや、お兄ちゃんの場合、疲れたのは熟睡する私を3階まで抱えて運んだせいか?
 或いは、私の身体で何度も射精したせいか?


 熟睡するお兄ちゃんの腕の中に無理矢理身体を捩じ込んだとき、後始末すらしなかったらしい股間から、お兄ちゃんの解き放ったものが流れ出た。
 薬は、飲んでいない。
 そして、所有すら、していない。

 ティッシュはどこだと上体を起こしたとき、左手の薬指にはまっていなければいけないものが跡形もなく消え去っている事実に気付いた。

「指輪、どこにやったの?」

 起きていたって熟睡していたって、お兄ちゃんが私に、私が望む回答を述べることはない。

「もしかして捨てちゃった?困ったな」

 どうせならビンタでもして起こしてから、抱いて欲しかった。
 そして、結婚を約束した彼氏がいるくせにって責めながら、ざらざらを触って、最低な女だって罵って私を殴って、泣かせて、その上で、抱いて欲しかった。
 それくらいしてくれなければ、連絡もなしに帰宅しない私を心配する先生を想像しただけで、良心の呵責に苛まれる自分がいた。

 まぁ、そんなこと望んだって気の弱いお兄ちゃんには絶対に出来るはずもないし、先生が事情を知れば、なんだそんなことかって、笑うだけだろうけど。





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