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泡のように
第24章 23.
真夜中の静寂にバイブ音が響いている。
私の視界に入らないどこか部屋の隅で、スマホが鳴っているようだ。
それが先生からの着信だということは、そのしつこさで、見ずとも分かる。
30分以上しつこく何度も鳴り続けているから、私は諦めて、ずるずるとお兄ちゃんの腕の中から這い出て、振動の元凶を探した。
それは、脱ぎ捨てられたお兄ちゃんのボロいハーフパンツの下に隠れていた。
黒い画面にはやっぱり先生のアイコンが表示されていた。
黙って応答ボタンに指先で触れる。
うしろでお兄ちゃんが寝返りを打ったのが分かった。
耳に当てようとしたとき、唐突に後ろからその動きを阻止された。
振り返ると、今まで一度も見たことのないような険しい顔で私のスマホを握るお兄ちゃんの姿があった。
「お前いま何時だと思ってんだよふざけんなぶっ殺すぞ」
呆気に取られる私の前で、お兄ちゃんは寝起きの低い声で先生に凄むと、終話ボタンを押しもせず、というかガラケーしか所有したことのないお兄ちゃんには操作の方法が分からなかっただけかもしれないが、とにかく、乱暴に畳の上に投げ捨ててしまった。
きっと今頃、先生はひとりぼっちのアパートで、何が何だか分からずにうろたえているに違いない。
可笑しさを堪えきれず顔をニヤつかせながら、せめて終話ボタンだけでも押さねば充電が切れてしまうと、慌ててスマホを拾おうとする私を、お兄ちゃんはまたしても妨害した。
「電源くらい切っとけよ」
それは、抱き締められる、といった、ある意味、予想外の形で。
私の視界に入らないどこか部屋の隅で、スマホが鳴っているようだ。
それが先生からの着信だということは、そのしつこさで、見ずとも分かる。
30分以上しつこく何度も鳴り続けているから、私は諦めて、ずるずるとお兄ちゃんの腕の中から這い出て、振動の元凶を探した。
それは、脱ぎ捨てられたお兄ちゃんのボロいハーフパンツの下に隠れていた。
黒い画面にはやっぱり先生のアイコンが表示されていた。
黙って応答ボタンに指先で触れる。
うしろでお兄ちゃんが寝返りを打ったのが分かった。
耳に当てようとしたとき、唐突に後ろからその動きを阻止された。
振り返ると、今まで一度も見たことのないような険しい顔で私のスマホを握るお兄ちゃんの姿があった。
「お前いま何時だと思ってんだよふざけんなぶっ殺すぞ」
呆気に取られる私の前で、お兄ちゃんは寝起きの低い声で先生に凄むと、終話ボタンを押しもせず、というかガラケーしか所有したことのないお兄ちゃんには操作の方法が分からなかっただけかもしれないが、とにかく、乱暴に畳の上に投げ捨ててしまった。
きっと今頃、先生はひとりぼっちのアパートで、何が何だか分からずにうろたえているに違いない。
可笑しさを堪えきれず顔をニヤつかせながら、せめて終話ボタンだけでも押さねば充電が切れてしまうと、慌ててスマホを拾おうとする私を、お兄ちゃんはまたしても妨害した。
「電源くらい切っとけよ」
それは、抱き締められる、といった、ある意味、予想外の形で。