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泡のように
第25章 24.
今まで何度も私に触れてきた大きなかたい手が、私の肩をポンポンと叩く。
その手を振り払ったのは、今朝のお兄ちゃんの言葉が脳裏に蘇ったせいだ。
「さわんないで」
言ってから、どうして2回もキスを許したくせに、今になってこんなことを言ってしまったんだろうと、後悔した。
この私の態度にはさすがの先生も明らかに苛立った様子だった。
唐突にバチンと鈍い音が響いた。
後ろに尻もちをついて、目の前に星が回る。
先生が私をぶったんだと気付いたのは、そのあとだった。
「あんまり俺をなめんじゃねぇぞ」
皮肉にも、罪悪感を払拭させたのはお兄ちゃんのビンタじゃなくて、被害者である先生のビンタによってだった。
まるで昼ドラのヒロインみたいにお姉さん座りで、乱れた髪で、じんじん痛む頬を手のひらでおさえながら、私の目の前で黄金聖闘士のシャカと化して仁王立ちしている先生を見上げる。
「ごめんなさい」
あまりにも素直な言葉が口をついて出たから、自分でもびっくりしてしまった。
先生は表情を緩めることもなく、吸いかけの煙草を円柱型の灰皿に投げ捨てると、座り込んだままでいる私の腕を掴んだ。
「とにかく、話は帰ってからだ。昨日兄貴に何言われたのか知らねぇけど、今日は絶対こっちに帰っとけよ。いくらお前が俺と別れたいとしてもな、それが礼儀ってもんだぞ。いいな?」
それだけ言って、先生はガラス戸の向こうに大きい身体を消した。
立ち上がることが出来たのは、その、ずっとあとだった。
その手を振り払ったのは、今朝のお兄ちゃんの言葉が脳裏に蘇ったせいだ。
「さわんないで」
言ってから、どうして2回もキスを許したくせに、今になってこんなことを言ってしまったんだろうと、後悔した。
この私の態度にはさすがの先生も明らかに苛立った様子だった。
唐突にバチンと鈍い音が響いた。
後ろに尻もちをついて、目の前に星が回る。
先生が私をぶったんだと気付いたのは、そのあとだった。
「あんまり俺をなめんじゃねぇぞ」
皮肉にも、罪悪感を払拭させたのはお兄ちゃんのビンタじゃなくて、被害者である先生のビンタによってだった。
まるで昼ドラのヒロインみたいにお姉さん座りで、乱れた髪で、じんじん痛む頬を手のひらでおさえながら、私の目の前で黄金聖闘士のシャカと化して仁王立ちしている先生を見上げる。
「ごめんなさい」
あまりにも素直な言葉が口をついて出たから、自分でもびっくりしてしまった。
先生は表情を緩めることもなく、吸いかけの煙草を円柱型の灰皿に投げ捨てると、座り込んだままでいる私の腕を掴んだ。
「とにかく、話は帰ってからだ。昨日兄貴に何言われたのか知らねぇけど、今日は絶対こっちに帰っとけよ。いくらお前が俺と別れたいとしてもな、それが礼儀ってもんだぞ。いいな?」
それだけ言って、先生はガラス戸の向こうに大きい身体を消した。
立ち上がることが出来たのは、その、ずっとあとだった。