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泡のように
第26章 25.
 黙り込んでしまった私を見て、あくまでもサービス業従事の2人は機転を利かしたのか、話題を変えるという試みに出た。

「しかしまぁ、篤志も智恵子も地味だね。髪なんて染めたことないんだろ?アタシが高校生のときなんか、月イチで髪の色変えてたけどな。今もコロコロ変えるしさー。最近は黒の気分なんだけど」
「えっ!アキホさんそれ、地毛じゃないんですか?」

 目をぱちくりさせる私に、アキホはハサミを扱う手を止めて、自分の長い髪を指先でつまんで見せた。

「これ?まさか。黒く染めてんだよ。自毛は篤志とそっくり同じ色だよ」
「はぁーっ!わかりませんでした!」
「ほぉ?わかんなかった?タカシ、おまえ髪染めんの上手いみたいだぞ転職しろよ。そうだ、目も黒いカラコン入れてんだぜ。もとの目も髪と同じで、篤志といっしょの色だよ」
「はぁーっ!」

 無意味に感嘆詞を強調させる私を、アキホは笑った。

「そんなに驚くことかよ?だって両親揃って同じ目ん玉と髪の色してんだぞ?当たり前のことだろ。なぁ?」

 感嘆詞を強調させるタイミングを逃したのは、タカシ、と呼ばれたアキホの旦那が唐突にくしゃみをしたせいだ。
 愛に満ちた笑顔で、アキホはタカシに「バーカ」と言った。
 
「まったく、嫌になるよ。うちのトーサンとカーサンには。あの年でまだラブラブでな、風呂とか一緒に入るんだよ。キモいだろ?アタシが18のときコイツと一緒になるって決めたときなんかさ、ヤッター!2人きりで暮らせる!とか言ってはしゃいじゃって。マジ頭イカレてるよなー」
「なんならもう1人くらいつくればいいのにな。まだギリ産めそうじゃん?レイナちゃんなら」

 タカシは笑いながら、レジのあたりにあったティッシュで鼻をかんでいた。

「おかしいとおもったり、しないんですか?」

 タカシの笑顔は、私の発言により、顔から消え去った。
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