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泡のように
第29章 28.
 おっさんは相変わらず、すぐに終わった。

「中には出さないでね。あんたの子供だけは、絶対に生めないから」

 そう言って残骸を腹に受けた私の笑みは、おっさんの心にどう映ったのだろう。


 シャワーを浴びたあと、股間を拭ったら茶色い血液がタオルに付着した。
 月のものが来たのだ。
 薬も飲まず、避妊もせず、なのに、妊娠しなかった。
 リセットされた身体は私に一体何を伝えたいのだろう。

 脱衣所から出てすぐ、開けっ放しにしていた襖戸の隙間からおっさんたちの寝室を覗いた。
 おっさんはすでに布団の上で死んだように身動き一つせず熟睡していた。

 お母さんとおっさんは、普段、どんなセックスをしてるんだろう。
 再婚相手の娘を犯した男と、それを容認していた女のセックスって。
 たった5分しか持たない男と、オランウータンみたいな女の、セックスって。

 この人、明日起きて仕事に行けるのだろうか?
 このまま目覚めなければいいのに。
 ははっ、意識とは関係なく、笑い声が唇の隙間から漏れた。

 だらしなく口を開けて裸のまま泥のように眠っているおっさんを見つめながら、襖戸を静かに閉めた。
 冷え切っているであろうヨボヨボの身体に、タオルケットを掛けてやることもせずに。

 そして何事もなかったようにゲロが胸元あたりに不着した汚いセーラー服を身に付けて、玄関ドアから外に出た。
 さっき、ドアの向こうで階段を上る足音が聞こえたからだ。

 お兄ちゃんの顔を想像しながら、向かいの青い鉄製ドアのチャイムを鳴らした。
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