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泡のように
第30章 29.
 晴香のカラコン入りのブルーの瞳がキラキラ輝いている。
 このあと受ける倫理の授業中に、フェイスブックにでも「ウチの友達の話なんだけどやばいこと聞いちゃった」みたいな感じで、今から私が話す内容を投稿しようと企み、スマホを扱うのが待ち遠しく、うずうずしている瞳だ。

「それヤバすぎ・・・智恵子の彼氏って一体どんな教師なの?」

 もし彼女が新聞記者なら今頃テープレコーダーを回しているところだろう。
 晴香は私が放つ言葉の一字一句すらも逃してたまるものかと前のめりになり、私の返答を待っている。

 私はふと考え、思考を巡らし、お兄ちゃんの陰気な顔と、日に焼けた首筋と、そして昨晩の繋がった血まみれの場所を思い出してから、少し大げさに、秋芳先生がいつもしていたみたいに、晴香に煙が当たらないように、ふーっと蒸し暑い木陰に白い煙を吐き出した。

「秋芳よりもっと、変態な教師」

 晴香は目を見開いて口を半開きにし、何度もうんうんと言いながら、私が次に繋げる言葉を待ち焦がれている。
 だから私は、彼女の期待を裏切らないように、にっこり微笑んでから、彼女に言った。

「そうだな。具体的に言うなら、私が小さい頃からマンコの中に指を突っ込んできたり、フェラを仕込んだり、私が10歳になったら処女を奪ったり、そんなことをしてきたくせに変態な自分がだいっきらいで、それで、別れようって言い出したくせに、高校生になった私に男がデキたら物凄く嫉妬して、愛してるなんて言って、そいつとの関係を終わらせようとするような、素晴らしい教師かな」

 晴香のブルーの瞳が、何度も瞬きして黒いつけまつげに隠れる。
 今日の晴香の投稿ページには、どれくらいの数のコメントが寄せられるのだろう。

 そうそう。
 しらじらしく、手のひらをポンと叩く。

「教師っていうよりも、お兄ちゃん、って言ったほうが、わかりやすいかも」

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