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泡のように
第31章 30.
 満員電車に揺られ、割れた窓ガラスの補修あとばかり目立つ校舎に足を踏み入れ、エロ本とテスト範囲のプリントが床に散らばる教室の自分の席に付き、鞄を机の上に激しく音を立てて投げ置いてから、その上に突っ伏して眠る。

 じきにチャイムが鳴ってドアの開く音が聞こえ、若い女らしさを感じさせる頼りない担任の声が教室に弱々しく響く。
 ざわざわ声が各々の居場所にだらだらと整列し、私にとってはどうだっていい話を、頼りない女らしい声が、だらだらと述べ立てる。

 そしてまたドアが開く音がして、ざわざわ声がそこらじゅうから響きだし、それは次のチャイムが鳴るまで続く。

「おい、そろそろ準備しとけよ。テストはじまんぞ」

 なんて言って後ろの席から私をつついたのが、1年の時私とクリスマスを不本意な形で過ごすこととなった、知らぬ間にラグビー部の主将になっていたキム君だったことに、親切心ばかりに気が取られ、気付く余地もなかった。

 鞄を机横にかけて筆箱からシャーペンと消しゴムを取り出すあいだに、前から前からプリントが回ってくる。何枚も。
 何のテストかすら分からない事実に気付き、もう一度机に突っ伏した。
 そこで、チャイムが鳴った。

「はじめ」

 などと、先ほどとは違う男性教員の声が耳に響く。
 はじめ、と言われたところで、何の教科だろうが、私は自分の名前を記名欄に書くだけなので、それが今だろうが終了間際だろうが、同じことだろう。
 だから、昨日ウチから出ていった山岸のおっさんの、哀れな皮被りのアソコを思い出しながら、眠るだけだった。
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