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泡のように
第32章 31.
お兄ちゃんがグラウンドに向かってくる外部侵略者の姿をサングラス越しに捉え、それが妹だと気付いたときの態度ったらなかった。
「な、なにしてんの?」
って、ジャージ姿のターミネーターのようないでたちのくせに、明らかにドキマギして、身を縮こませていたからだ。
自習にさせたって変わらないようなダラダラした男子生徒たちに授業を一時任せ、グラウンドの一番すみっこの体育館前にまで私を連れて行ったお兄ちゃんは、困惑しきった様子でサングラスを外し私に尋ねた。
「なにしに?え?来たの?え?え?」
困惑が止まらないお兄ちゃんに対し、黙ってエコー写真を手渡した。
お兄ちゃんは怪訝な顔でそれを受け取ると、しばらくの間考え込んでいた。
鳶色の瞳が何度も木陰の中で瞬きしている。
「これ嘘じゃないだろうね」
お兄ちゃんはある瞬間、エコー写真を指の間に挟んだまま私を見つめて確認を求めた。
少なくとも、喜んでいる顔には見えなかった。
陰気なお兄ちゃんの顔に、リナの顔が重なって見えた。
「嘘のために原付を1時間半もぶっ飛ばしてくると思う?詳しい話は家に帰ってからでいいんだけどさ。お金が足りなかったから病院の会計済ませてなくて。とりあえず2万円くらいお金貸してくれる?」
大雑把すぎる勘定で借金を申し込む私の不完全な回答にお兄ちゃんはしばし考えたのち「兄ちゃんが、あ、あとで支払いに行くから、智恵子は帰りなさい」と言った。
それと同時に、台所の引き出しの一番奥に兄ちゃんの隠し財産があるから、着いてから払えばいいから、智恵子はタクシーで帰りなさい。とも、言った。
それが、腹の子の父としての私への配慮だったのか、または無免許運転のせいで事故られて原付を大破されたりでもしたら迷惑だと思ったからなのか、真意は不明であるが。
「な、なにしてんの?」
って、ジャージ姿のターミネーターのようないでたちのくせに、明らかにドキマギして、身を縮こませていたからだ。
自習にさせたって変わらないようなダラダラした男子生徒たちに授業を一時任せ、グラウンドの一番すみっこの体育館前にまで私を連れて行ったお兄ちゃんは、困惑しきった様子でサングラスを外し私に尋ねた。
「なにしに?え?来たの?え?え?」
困惑が止まらないお兄ちゃんに対し、黙ってエコー写真を手渡した。
お兄ちゃんは怪訝な顔でそれを受け取ると、しばらくの間考え込んでいた。
鳶色の瞳が何度も木陰の中で瞬きしている。
「これ嘘じゃないだろうね」
お兄ちゃんはある瞬間、エコー写真を指の間に挟んだまま私を見つめて確認を求めた。
少なくとも、喜んでいる顔には見えなかった。
陰気なお兄ちゃんの顔に、リナの顔が重なって見えた。
「嘘のために原付を1時間半もぶっ飛ばしてくると思う?詳しい話は家に帰ってからでいいんだけどさ。お金が足りなかったから病院の会計済ませてなくて。とりあえず2万円くらいお金貸してくれる?」
大雑把すぎる勘定で借金を申し込む私の不完全な回答にお兄ちゃんはしばし考えたのち「兄ちゃんが、あ、あとで支払いに行くから、智恵子は帰りなさい」と言った。
それと同時に、台所の引き出しの一番奥に兄ちゃんの隠し財産があるから、着いてから払えばいいから、智恵子はタクシーで帰りなさい。とも、言った。
それが、腹の子の父としての私への配慮だったのか、または無免許運転のせいで事故られて原付を大破されたりでもしたら迷惑だと思ったからなのか、真意は不明であるが。