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泡のように
第32章 31.
「母さん、メシ食ったかな」

 冷蔵庫の前でしゃがみこんでいたお兄ちゃんが、ふいにそんなことを言った。
 今朝置いてきた不格好なホットケーキを思い出した。

「朝ホットケーキは置いてきたよ」
「ああ・・・そんなんで、足りたかな」
「いいダイエットになるんじゃない?お母さん全然ダイエットしてないし」
「でも、だからといって、絶食していいってもんじゃ、ないよ」
「お兄ちゃん、私もお腹すいたな」
「・・・ちょっと、母さんの、様子みてくる」

 は?私のことは心配しないくせに?

 突発的な怒りが、突発的に行動に現れた。
 手を伸ばせば届く距離にあった白い陶器製のフレームの写真立てを、お兄ちゃんの背中目掛けて、思いっきり投げた。
 そして、後頭部に命中。
 さすがのゴリアテも不意打ちによろめき、その場にしゃがみこんだ。

 学生時代の厳しい部活の関係でどつかれ慣れてるお兄ちゃんは、後頭部を摩りながらイッテェと呟きつつ、私に振り返った。

「な、なに」

 その顔は悪びれた様子もなく、単純に私に対しての疑念で歪んでいる。


 

 
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