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泡のように
第32章 31.
 その顔は、出処不明の不安感と苛立ちを最高潮に達させた。

「どうせお兄ちゃんは妊娠した妹より、お母さんとか、リナとかのほうが大事なんでしょ!」

 私に対する疑念に歪むお兄ちゃんの顔は、すぐに白いもやで覆われて見えなくなった。
 だから、お兄ちゃんの訝しがる声だけが耳の中に入ってくる。

「リナ?」

 歯の間から声が漏れる。肩が、腕が、全身が震える。
 胸が痛い。
 どうして今更泣いたりするのか分からないともう1人の私は冷静に言うけれど。
 でも、お兄ちゃんがシャアザクのキーホルダーを合鍵にぶら下げるように。
 私も人間だから。
 きっと、仕方のないことなのだろう。

「なに?いつ、観たの?」

 お兄ちゃんの声はため息混じりだった。

「ひとのパソコンを勝手に詮索するなんて・・・お前、趣味悪いな」

 趣味悪いって、どっちが?
 反論したいのに、嗚咽が止まらなくて、まともな声が出ない。

「お前も、あの変態のおっさんと付き合ってたんだから。俺に、どうこう言う資格なんて、ないと思うけど」

 冷蔵庫の締まる音。
 
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